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~県美をつくるひと~VOL.14

『県美をつくるひと』では、インタビューをもとに、県美に携わっている方の紹介、県美への想いを伝えていきます。建物が竣工し、鳥取県立美術館の開館準備業務は「モノづくり」から「コトづくり」へ。

今回は、鳥取県地域社会振興部美術館学芸担当参事(併任 鳥取県立博物館 美術振興課長)、三浦 努さんにお話を伺いました。

※インタビューは2024年3月15日時点のものです。

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学芸員であり、みんなの相談役

現在は、鳥取県立博物館の美術振興課長、そして美術館整備局・美術館整備課の参事として、普及啓発事業、美術に関する専門的な分野に関する業務のすべてを総括しています。

基本的には担当者が中心で考えますが、これまでの経験や知識をもとにアドバイスしたり、時には判断したり、いわゆる「相談役」ですね。限られたスタッフの中でこなさなければいけない仕事は多岐に渡り、業務量もかなり多いので、直接自分が担当する業務もたくさんあります。

自分の視点で作品にアプローチし、発見を伝えていく

学芸員の仕事の1つに「価値があると思う作品の魅力を全力で説明する」ということがありますが、専門知識やアプローチによって言葉や視点が異なるので、1つの作品をとってもそれぞれに発見するものが変わってきます。アートはある意味で正解がなく、非常に不思議であり、自由な存在です。その素晴らしさをめぐって様々な活動ができることは学芸員という仕事の魅力だと思っています。自分の視点で作品にアプローチし、美術史的な意義やキラリと光る魅力を発見したら、それを誰かに伝えていく。僕らは「作品」と「自分」だけの関係で完結せず、それをいかに「自分以外の人たち」に向けて伝えられるか、作品と自分以外の人たちとをつなぐことができるかに力を注ごうとしています。

ただ、どれだけ熱い想いがあっても、伝わらないことには始まらないので、「いかにわかりやすく伝えられるか」ということを意識しています。専門的な視点に由来する発想や言葉を、平易な言葉でかみ砕いて伝えるのですが、それはなかなか難しいことです。

そういったことを「表現活動」と呼ぶことはできるけれど、現代詩を書いているわけではないので、「感じ取ってほしい」というより「意図を共有したい」と思うところから始めています。だから「伝えたい」という言い方もあるし、「理解してほしい」というのもある。頭の中にあることをいかに誤解なく伝えられるか。それは作品の魅力を説明するときだけでなく、日々の業務においても心がけていることですね。

アートのいろいろな可能性に触れてもらえる美術館へ

鳥取県立美術館は、アートのいろいろな可能性に触れてもらえるような美術館でありたいと思っています。教科書にも出ているような、有名な作品を見られるというのも大切ですが、それだけだと「確認作業」になってしまうような気がするのです。既に知っているものしか並んでいないのだったらつまらない、ワクワクが無いのではないかと思うんです。とはいえ、誰もが知っているような作品も見たい、という感覚も分かるので、メジャーなものとマイナーなものが共存して、「いろんなものが見られる」というのが大切ではないでしょうかね。見る人の価値観や意識を揺さぶるような驚きがあり、「あれは一体なんだったんだろう」と皆さんが振り返るなかで、徐々にアートに対する考え方が広がっていくのだろうなと思います。

いろいろな鑑賞体験を提案したいと思っているので、新しい美術館を楽しみにしていて下さい。

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2024年8月11日、「学芸員ショーケース」にて三浦さんのお話が聞けます!「学芸員ショーケース」は、開館前に鳥取県立美術館の学芸スタッフが、トークやワークショップ、そのほかの手段で自分の専門や経歴、興味や関心を伝える連続イベントです。みなさまふるってご参加ください!

詳細は下記URLよりご確認いただけます。
ttps://tottori-moa.jp/news/6976/

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『県美をつくるひと』シリーズでは、今後も美術館に関わる方々の魅力を発信していきます!