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【建設現場リポート】 “わたす”存在を体感!!(2023.2)

建設現場に、約16.5mというとても長い柱がやってきました!!
建設現場で溶接して約16.5mにするのではなく、工場で一本ものとして製作した柱を建設現場へ運び、建て込んでいきます。長物を一体どうやって建設現場まで運んでくるのか?!というと、もちろん長い特別仕様のトラックによるとのこと。運搬経路は予め綿密に計画されておりますが、小さな交差点など難所を超えてここまでやってきたのかと想像すると、トラックの運転手さんに頭の下がる思いです。


▼想像していたより細い柱

3層吹抜けのひろまをつくる為に必要な柱ですが、水平力(地震時の横力)は梁や床で北側の堅牢なRC造へ伝達することにより、支持する柱径を細く計画されています。この柱とえんがわ、テラス、大屋根により懸け造り※を思わせるような姿がつくられていきます。

※崖など急な斜面に張り出して建てられた木造建築物の様式。 崖の下から長い柱と梁を格子状に組み上げた上に建物を建てる工法です。代表的な建築として京都の清水寺、そしてわが町鳥取の三仏寺投入堂があります。

▼宙に浮かぶ柱の様子

寝かせてあった柱が徐々に立ち、計画された位置へ建て込まれていきます。柱の振れや転がりを防止するため、安全に十分配慮しながら移動式クレーン2台による共吊りで建て起こします。

▼設置された柱の様子

柱の“はし”は、あいだにあるものを示し、『間』を“はし”と読んでいたそうです。そこから転じて、「わたす」という意味を持つようになったという一説があります。『橋』や『階』、『梯』、そして『箸』や『嘴』も、あいだを繋ぎ、わたすという点で同じ語源をもっているようです。今回これまで見上げていた天と、今立っている地がつながり、『柱』が上下をわたす、そんな貴重な場面に立ち会うことができました。

▼「わたす」役割を待つ階段のパーツたち

▼階段が建て込まれる竪穴空間

まずは柱と梁を建て込み、そこに階段が掛けられ、上下の空間をわたしていきます。
パズルのように複雑で多彩なパーツが、工場で、現場で組み立てられ、建て込まれて、仕上げが施された後に、ようやく階段として出来上がります。階段は部分的なズレが全体のゆがみにつながるので、充分に注意しながら工事が進められます。

▼最上階の展望テラスにて

『柱』や『階』によって上下の空間がわたされ、展望テラスから倉吉市内を一望することができます。計画されてきた空間が徐々に立ち現われ、そして空間と空間が繋がり、おおきな建物として美術館の姿が捉えられるようになった今、地域の拠点施設として周辺施設と繋がっていくことはもちろん、人の心と心をわたす存在になってほしいと心から願うのでした。

建設現場レポート、次回もお楽しみに!


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