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~県美をつくるひと~VOL.19

『県美をつくるひと』では、インタビューをもとに、県美に携わっている方の紹介、県美への想いを伝えていきます。

今回は、鳥取県立美術館パートナーズ 運営/展示企画担当の平尾智さんにお話を伺いました。

※インタビューは2024年10月1日時点のものです。

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企画展を通して、定まっていなかった価値をちょっとずつ拓いていく役割 

美術館で企画展をつくる役割を担っています。私のミッションは、これまで美術館でなかなか取り扱われてこなかったものを美術の取り組みにしていくところです。鳥取県がまんが王国という取り組みをやっていますが、まんが等ポップカルチャーは一見すると「それが美術なんだろうか?」と思う人も多いと思うんです。でもそのような枠組みの中で創作者の思いを拾い上げ新たな視点を拓いていく。まずはまんがですが、いずれは建築や絵本、ファッションなど生活で身近なことを切り口に、今まで美術というカテゴライズにはまってこなかったものを美術館で取り扱いながら、定まっていなかった価値をちょっとずつ拓いていきたいと考えています。

まちづくりにおける美術の可能性を感じ、現在へ

 建築の勉強をしていた大学生の頃、建物や街づくりだけではなく関心を寄せていたのが芸術祭です。地方で芸術祭が盛んになりだしていたのですが、美術の取り組みによって外からたくさん人が来たり、土地の人が自分のまちについて語りだす様子を見て、すごいなと思ったんです。建築はハード的にまちをつくるけど、ソフト的にまちに何があるべきなのか考えたとき、美術には何か可能性があるなって。その頃から、いずれは美術と建築との狭間でまちをよりよくしていく仕事ができたらいいな、と考えていました。

前職では国内外にわたり、まちづくりや建築の内外で美術を取り入れたいクライアントに対し、基本構想、作家への依頼、制作施工の管理などコーディネート全般をやっていました。他にも、土地の人と関わりながら芸術祭やアートプロジェクトに携わることももちろんありましたし、一方で一般のお客様のご要望を整理しながら美術品を販売することもやっていました。本当に美術を媒介にした何でも。。。を幅広く経験した感覚があります。今は美術館での仕事なのでフィールドが変わり、全く異なる環境のようにも見えますが、「まち」や「建物」のコンセプトに沿ってアート計画のストーリーを作ったり、一般の方々の気持ちに沿ってどうあるべきか考えることは、現在の役割でもある一つの企画展を構想していくことにも繋がっているのではと感じています。

今後は、企画を通して美術のおもしろさを感じてもらいたい 

美術って、様々な繋がりをつくる一つの媒体なんじゃないですかね。今だと気楽にネットで簡単に人や情報と繋がることができるけど、美術は意外と泥くさくって、協力し合わないと成立しなかったりと、アナログさを含んでいると思います。美術がいつの時代も絶対になくならないのは、美術があることによって“何か”とつながる可能性を秘めているからなのかなと思います。人それぞれつながる先は色々あるのかもしれないけれど、“何か”があるんだろうなと思うんです。

企画展の関連プログラムとして作家によるワークショップも計画しているのですが、美術鑑賞は難しいなと思っている人にとっても違う角度から、美術は実は身近な暮らしの延長線上にあったり、日頃学校の授業で見聞きしていることとも繋がっているのかな。。。と想像したりと、そんな機会になればと考えています。他にも作家の言葉とか、考えていることを聞いて「なにそれ!?」と気づかされることが私自身結構あるのですが、そういうのって自分の考えている中で生活していると絶対に巡り合えないと思います。自分の知らない世界を見せてくれる存在として、作家の存在は本当に貴重だなと思っています。美術のおもしろさを皆さんに感じていただき、今まで持ち得なかった視点を持ち帰ってもらうためにも、作家も交えて入り乱れながら対話できる機会をつくっていきたいです。

髙橋匡太ワークショップ『雲の遠足』の様子(右から1番目は高橋匡太さん、2番目は平尾智さん)

鳥取県立美術館は、いつでも、誰に対しても開かれている場所でありたい

美術館としては、まず、ここに美術館があるということを認識してもらって、気楽に来てもらえるようにしていきたいですね。美術は誰に対しても開いているものだと思っているので、人がつながりたいなと思ったときに、どうぞいつでも来てください!と構えていられる存在でありたいです。

美術の食わず嫌いももちろんあると思いますが、まずは何か新しいところができたんだな、という興味からでもいいと思います。何だかわからないなと思いながらでも遊びに来てもらえたら。その一歩がすごく大変ですが、分からないことに気付くのが大事だと思います。分からないことを意識することのほうが実はあんまりなかったりすると思うので、まだ見ぬ“何か”との思いがけない出会いを探して美術館へ来てみるのはいかがでしょうか。

髙橋匡太ワークショップ『雲の遠足』の様子(画面中央が平尾智さん)

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平尾さん担当企画の展覧会「水木しげるの妖怪百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」は2025年7月に開幕です!
https://tottori-moa.jp/exhibition/view/exhibition-02/

関連プログラム「髙橋匡太 アートプロジェクト雲の故郷へ」はすでに始動しており、ワークショップ『雲の遠足』は順次開催中!次回開催は1月です!
https://tottori-moa.jp/news/7423/

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『県美をつくるひと』シリーズでは、今後も美術館に関わる方々の魅力を発信していきます!